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【論文掲載】SLAPデブリードマン後に残存した肩前方痛に対する下肩甲神経ハイドロリリースおよび肩甲下筋再教育
―Cureus誌に症例報告が掲載―

2025年10月7日

2025年10月6日、STEPメンバーの 直井大地(なおいだいち)らによる症例報告論文「Lower Subscapular Nerve Hydrodissection and Subscapularis Re-education for Residual Anterior Shoulder Pain After Superior Labrum Anterior to Posterior Debridement: A Case Report」が国際オープンアクセス医学誌 Cureus に掲載されました。

本症例は、SLAPデブリードマン後に残存した前方肩痛を呈したアームレスリング愛好者において、下肩甲神経(Lower Subscapular Nerve: LSN)への超音波ガイド下ハイドロリリースと肩甲下筋(subscapularis)再教育リハビリテーションを組み合わせることで著明な改善を得た世界初の報告です。


症例概要

40代男性アマチュア・アームレスラーが、SLAP病変に対する鏡視下デブリードマン後も前方肩痛(NRS 7)と内旋筋力低下(MMT 3)を訴えました。従来の治療(ステロイド注射や上肩甲・腋窩神経ハイドロリリース)では改善が得られず、超音波で同定した下肩甲神経(LSN)を標的に8 mLの低濃度リドカインでハイドロリリースを実施。直後から痛みはNRS 3へ低下し、1か月後には完全消失(NRS 0)、内旋筋力もMMT 5まで回復しました。


治療の特徴と意義

  • LSNは肩甲下筋を直接支配する神経であり、動的前方安定性に重要。

  • ハイドロリリースにより神経滑走を回復させ、**肩甲下筋の再教育(re-education)**を促進。

  • 超音波を活用したリアルタイム・バイオフィードバック訓練で、選択的収縮を再学習。

  • 12〜16週間のリハビリ継続後、競技復帰を果たし大会優勝に至った。

この症例は、SLAPデブリードマン後にみられる「構造的損傷では説明できない痛み」が、**肩甲下筋の機能的障害(functional impairment)**によって生じうることを示しています。構造修復だけでなく、神経・筋連携の再教育を行うことの重要性を明確に提示しました。


臨床的意義

  • SLAP病変術後に痛みが残存する症例では、肩甲下筋機能不全の評価と介入が鍵。

  • 下肩甲神経へのハイドロリリース+肩甲下筋特異的リハは、新しい保存的治療戦略として有望。

  • 本研究は、動的超音波を用いた「機能再構築型」アプローチの有効性を実証しています。


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掲載情報


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